「美加子、俺さ。アメリカの大学行くわ」
それは青天の霹靂だった。
付き合い始めてから半年、出会ってからはもう9ヶ月経つ。
3年になり、受験という明確な目標を前に恋愛など、
と反対するはずの両親がなぜか浩二と付き合いを許してくれた。
それから6ヶ月。
勉強との両立が条件ではあったけれど、ほのぼのとした交際を続けてきた。
だからだろうか。
自分たちはこのまま穏やかな月日を過ごしていくのだろうと思っていた。
まあ、大学まで同じというわけではないだろうが、
少なくとも離れることなど考えにも及ばなかったのである。
「え?」
分厚い本を読みながら何気なく宣言してくる浩二を前に、
美加子は固まった。
(アメリカの大学?)
広げていたノートからなんとか顔をあげたが、笑顔がこわばってしまう。
「なんで?」
震える声で尋ねると、
浩二がこちらを見つめ真剣な表情で即答してきた。
「やりたいことがあるから」
ごめんな、と目を伏せる浩二を前に、
何か言わなければと焦るものの、言葉に詰まる。
(言わなきゃ! ……でも、なにを?)
喉が、全身が、締めつけられたように苦しい。
結局、美加子はかける言葉を見つけることはできず、
再び本へと視線を移す浩二に対し、ひたすら沈黙しているほかなかった。