恋に落ちた瞬間(とき) 2
とちぎさんによる写真ACからの写真

≪ 一、夕飯前のひととき 2 ≫



「ふふふ。ありがとうございます。
でも、お狐様もおっしゃっていましたけど、お義母様の作る甘い卵焼きも私は好きですよ」
「べ、別におだでたって何も出やしないよ」
「ふふふ。本心ですよ、お義母様」

 園子が笑いかけると、正子はわざとらしく咳払いをした。

「そ、それにしてもスタンプラリーなんて、面白いことを考えつくものだね」

 そもそもなぜお狐様に出汁巻き卵の試食をお願いしたかといえば、
小笠原神社が商店街で行われるスタンプラリーに参加することになったからだ。

 駅前にデパートができてしまった影響で、我が家の近くにある商店街は
年々活気がなくなっていった。
それを憂いた娘の清美(きよみ)が、友人たちと画策したらしく。
商店街でスタンプラリーをすることになったという。

 当初、商店街と駅前のデパートのみの催しだったのだが、
お狐様が清美の願いを受け入れたことにより小笠原神社も参加することになったのだ。
最初は、神社へ参拝に来た人へスタンプを一つ押すだけの予定だった。
だが、姑の提案でお狐様の好物である出汁巻き卵を売ることになったのだ。

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