ユキうさぎの遠足 その3

 彼女にそのことを持ちかけられたのは、

新らしい学年にも慣れ始め、

中間テストの範囲と日程が発表された頃だった。


「今度のテストで良い点数が取れたらデートしてください」


 うさぎの断られるとは思っていないような口振りと、

彼女と母親に振り回され続けている現状に

これではまずいのではないかと思い始めていたユキは

初めて首を横に振った。

そもそも良い点しか取ったことのない彼女にそんなことを

言われても、出来レースにしか思えない。

それをうさぎに指摘してみたが、彼女は諦めなかった。


「ではユキ先輩の思う良い点を教えてください。

 それ以上の点が取れたら私の勝ちということで、

 ご褒美にデートしてください」


 うさぎが、大きな瞳をキラキラさせて顔を近づけてきた。

髪の毛の匂いだろうか。甘いココナッツの香りと、

真っ直ぐこちらを見続ける彼女の視線に、顔が熱くなる。

ユキは早くこの距離から逃れたくて、

何も考えずに合格点と了承の意を口にした。

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