時はこうして流れた。
気がつけば、約束を果たしたあの日から、はや数ヶ月が過ぎていた。
役目を終えたアルマは未だこの街に留まり、
穏やかで平和なごくありふれた日常を送っていた。
……表面上は。
内面は、ひどく荒んでいた。
アルマはいつまで経っても一向に消える気配のない自分自身に、
深い疑念と戸惑いを覚えていたのである。
この身体は、もはや『アルマ』という名の少女そのものであるというのに、
中身に内在する意識は、未だ『ジョーイ』と呼ばれていた頃そのままの自分だ。
(なぜ消えないんだ?)
鏡に映った黒髪の少女を見つめながら、『ジョーイ』は小さく息を吐いた。
約束を無事果たし終えたら、
アルマの中にある自分の意識は消え去るのだと考えていた。
残された身体には、少女本来の意識が芽生えるものと思っていた。
自分は一時身体を借りているだけ。
『アルマ』の意識は少しの間眠っているだけだ。
『ジョーイ』はそう信じていた。
だが、実際はどうだ。
いつまで経っても天へは召されず、アルマの意識も目覚める気配はない。
心の中で幾度その名を呼び掛けても、なんの変化も見られない。
(いったい、なぜ?)
『ジョーイ』は強く頭を振ると、鏡から視線を逸らした。