約束 その3

 生まれ育った街へ一年ぶりに帰ってきたジョーイは、

喜びで胸がいっぱいだった。

戦争が終わった。戦いに勝利した。

 金が入る。家族のもとへ帰れる。

病弱な父と母と幼い妹のために土産物を買い込んだ。

父には薬と好きな葉巻を、母には腰巻と靴下を、妹には赤い赤い絹のリボンを。

だが、そんな自己のささやかな幸福は、無残にも吹き飛ばされてしまった。

金も、薬も葉巻も腰巻も靴下もこの命さえも……。


 天罰だ。

天罰なのだ、これは。

自分は人を殺したから。たくさんたくさん殺してしまったから。

もう何一つもとには戻らない。何もないのだ、もう……。




 ジョーイは無意識にポケットを弄った。

そこには真新しい深紅のリボンが、

買った時となんら変わりない姿で納められていた。

視線が、いるはずのない愛しい者たちを求めて泳ぐ。

「見つけた……」


 白濁する意識のなか己の瞳が捉えたのは、黄色い服を着た愛らしい子供だった。

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