秋色ノクターン 第3話

 浩二と話せないまま、約10日。

部活は引退、選択授業が増えたせいもあって、

ホームルーム以外に彼と顔を合わせる機会もない。

 塾と学校の往復だけの生活。

このまま自然消滅してしまうのではないだろうか。

そんなことを考え机で悶々としていると、横合いから声をかけられた。


「こらこら、いくらなんでも暗いぞ」


 部活仲間の長里有香(ながさとゆか)が頭を軽く小突いてくる。


「なによー……」


 文句を言って、嫌々ながら顔をあげると、

みっちゃん、と同じく部活仲間の加賀見紗江(かがみさえ)が問いかけてきた。


「今日の放課後塾までちょっと時間あるでしょ?」

「あるけど」

「じゃあ、ちょっとつきあって」


 紗江におっとりと微笑まれ、美加子は首をかしげる。


「いいけど、どこへ?」

「近くにたこ焼き屋さんができたから、

ゆっちゃんと行こうって話してたとこだったんだ。

みっちゃんも行こう?」


 ね、と邪気のない笑顔でだめ押しされ、美加子は勢いで頷いた。


「よかった。じゃああとでね」


 手を振り去っていく友人たちを目をしばたたきながら見送る。


「たこ焼きねえ……」


 どうせ行くなら浩二といきたい。

ちらりと思った本音を慌てて振り払い、

美加子は頬杖をついて次のチャイムを待った。

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