浩二と話せないまま、約10日。
部活は引退、選択授業が増えたせいもあって、
ホームルーム以外に彼と顔を合わせる機会もない。
塾と学校の往復だけの生活。
このまま自然消滅してしまうのではないだろうか。
そんなことを考え机で悶々としていると、横合いから声をかけられた。
「こらこら、いくらなんでも暗いぞ」
部活仲間の長里有香(ながさとゆか)が頭を軽く小突いてくる。
「なによー……」
文句を言って、嫌々ながら顔をあげると、
みっちゃん、と同じく部活仲間の加賀見紗江(かがみさえ)が問いかけてきた。
「今日の放課後塾までちょっと時間あるでしょ?」
「あるけど」
「じゃあ、ちょっとつきあって」
紗江におっとりと微笑まれ、美加子は首をかしげる。
「いいけど、どこへ?」
「近くにたこ焼き屋さんができたから、
ゆっちゃんと行こうって話してたとこだったんだ。
みっちゃんも行こう?」
ね、と邪気のない笑顔でだめ押しされ、美加子は勢いで頷いた。
「よかった。じゃああとでね」
手を振り去っていく友人たちを目をしばたたきながら見送る。
「たこ焼きねえ……」
どうせ行くなら浩二といきたい。
ちらりと思った本音を慌てて振り払い、
美加子は頬杖をついて次のチャイムを待った。