コンコン様の家来候補生 その1

 卒業してから数年。

あの頃と同じようにグランは今日も自分専用の研究室に篭もっていた。


 日の光が入らないほどうず高く積み上げられている本の山。

部屋の中央に位置する机の上には実験道具は所狭しと置かれている。

グランにとって何よりも落ち着く場所だ。


 自分の好きなことが仕事になることほど幸せなことはない。

あの時医者にはならず、薬の研究や精製に没頭できる道を選んで良かった。

例え、そのせいで徹夜が続いたとしてもグランにとっては楽しみでしかない。

現に今朝方完成させた薬も、グランがここ数日研究室に泊り込んで精製したものだった。

寝不足で頭は朦朧としているが、完璧な精製できた喜びでグランの気分が高揚している。

仕事も終了したのだから家に帰り休めばよいのに、

グランは帰宅することもなくそのまま趣味としての実験を始めた。


「さて、後は待つばかり」


 鼻歌混じりに呟くグランは、今にも踊りだしたいほど機嫌がいい。

だが、視線は机の上で行われている実験から逸らされることはなかった。


「持つべき者は遠くへ行った所先輩方だよな」


 学園を卒業した者たちがふらっと遊びにくることがある。

その際、必ずといっていいほど土産と称してこちらでは見たことのない薬草を持ってきてくれた。

もちろん師匠であるアルフに渡されるのだが、

アルフがそれをグランへと横流しするので実質グランが貰っていることと同じである。

そんな先輩方のお土産の一つが、グランが自分の休みを蹴ってまでしている実験の素材だった。


 目を離すことが不可能な実験のため、先延ばしし続けていた代物。

それを念願叶って、やっと実験ができるようになったのだからグランの機嫌が良くならないはずがない。

そんな頬の筋肉が始終緩みっぱなしのグランの耳に、聞きなれた声が聞こえてきた。

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