夕立 2
K-systemさんによる写真ACからの写真

  一



「それより、ご用件は?」


 わたしは話を促す。


「あ、ああ。うん。実はね……」


 叔父は一つ咳をした。

それから、諦めの色を滲ませた穏やかな口調で、再度話を切り出した。


「ある書類を指定された場所まで届けに行ってほしいんだ」


 叔父は告げた。

どうということはない。

要はただのおつかいである。

あまりに言い渋る叔父の様子に、何事だろうと気負っていた心が一気に崩れた。

まったく拍子抜けもいいところだが、彼の不器用なまでの気遣いが返ってありがたくもあった。

一つ前を読む   小説の部屋に戻る   次を読む





オープニング背景画像: K-factoryさんによる写真ACからの写真